希望という名のきみへ

「泉には、わたしの産んだ子がいる。

名を空(ソラ)という。

前にも話したと思うが、我々新人類は自ら子を育てない。

泉の外の世界が危険、ということも理由の一つだが、母乳で育てることに危険があるのだ。

このテラで、放射能に汚染されていないのは種子だけだ。

テラは残留放射能によって、徐々に汚染されている。我々も例外ではない。

だから、母なるテラは人類存続の為に泉を創った。

泉の水は、豊富なミネラルに満たされている。いわば、滋養を持った命の素なのだ。

我々は産み落とした子を、泉へと授ける。

新人類の赤子には、小さな鰓が付いていて、自ら地を足で歩けるようになるまで、水中生活を可能にするのだ。

泉の滋養分は我々の想像を遥かに超えるものだ。

泉で育つ子の成長は早い。

固体差もあるが、早くて十年で子は成人となる。

我が子ソラも、もうかなり大きくなったことだろう」



繰り返し響く、声、声、声……
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