恋愛パラドックス
何とか。
健康男子高生の波から、美音を無事、死守することが出来たオレたちは。
高校から少し距離を置いた、駅前のマックにいた。
美音は、そんなオレの苦労があった事も気づかずに
目の前の席で、終始笑顔でチーズバーガーに食らいついている。
端から見たら、ただの“チーズバーガーが大好物な子"だ(笑)
「そんで?オレに会うのを言い訳に高校偵察に来たわけだ」
いまだやる瀬ない気持ちが残っていたオレは、ちょっと意地悪に確認する。
美音は食べながらコクンと頷いた。
ちょっとは否定して欲しいもんだが…―、
なるほど。怪しまれても大丈夫と自信を持っても言えるわけだ。
『来週からの教育実習校を見に来た』
という素晴らしい理由がある。
「じゃあ、話ってそれだけ?」
「うん。早く徹平に言いたくって」
「何で俺に?」
「だって徹平は…」
「だって?」
「あたしの初めての生徒だもん!!」
美音は照れながら、可愛い笑顔をくれたけど。
オレは素直に喜べなかった。
オレは美音に『生徒』って言われるのが、嫌いだ。
その度、『男として見てない』と宣告されている気がして。
でも、そんな事も。
直では言えないオレは、せめてもの抵抗に
ポテトを食べながら頬図絵と、盛大な溜め息をついた。
「あとね…」
だけど、やっぱり美音は。
そんな事にも気づかないまま、また話始めて―…、
すぐに一瞬、沈黙する。
そして、少し表情が曇らせる。
なんだ、これ。
すげー、不安。
*