恋愛パラドックス
「実習の準備とか色々あってね、今日から1ヶ月。家庭教師のバイト休むことになったの…」
案の定。
美音は、とんでもない言葉を口にした。
「でもね、ちゃんと他の人が来るからね。徹平の勉強は大丈夫だよ?」
そう、美音はニコッと笑ってみせるけど、心苦しいのか、またすぐに俯く。
オレは、
何も喋れないでいた。
美音が家庭教師じゃなきゃ、意味ないのに。
他の奴なんか来たって、何の意味にもならない。
美音だから、親に言われたとおり勉強してたのに。
そんなことばかりが、頭の中を巡っていて。
「1ヶ月たったらまた戻ってくるんだろ?」
「うん…たぶん…」
「たぶん、ってどういう意味?」
「…。」
さらに美音は、無言のまま俯く。
「家庭教師やめるの?」
「そうじゃないけど…」
美音は酷く困った顔をして、ホットコーヒーを一口飲んだ。
俺もひどく喉が乾いていた。
別に困らせたいわけじゃないのに…。
会話が途切れ途切れで、上手く進まない。
「まぁいっか。来週からは学校で会えるってことだもんな?」
だから、オレは業と笑ってみせた。
美音の気持ちを、確かめるように。
俯く美音の顔を、覗きこんで。
だけど、美音は目を逸らして、その小さな唇を開く。
「徹平、もう、こうやって会うの止めよう?」
「それ、本気で言ってんの?」
*