或る一人の悲しい男の物語

 昔、一国を治めていた神官がいた。彼は国の中で神の声が聞こえる唯一の存在だった。
「すべては神によってのみ、この国は動くのだ」
 それが彼の、口癖だった。
 しかしいつしか彼は神の声よりも、自分中心に国を動かし始めた。するとバランスの取れていたこの国も歪んできて、もう崩壊するところまで来てしまった。
 そこへ、神官を王の座から下ろそうという者達が立ち上がった。
 彼らは神官を倒し、再びこの国は新しくスタートした。
「神の声はいらない、一人の自己勝手も駄目、皆で決めるのだ、この国の道を」
 そしてこの国は神官を倒した彼ら、特に一番最初に神官を傷つけた男によって治められた。

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