天神学園高等部の奇怪な面々Ⅵ
何の冗談かと思ったが、ステージで披露された曲は本当に『どんぐりころころ』だった。

そう、幼稚園とかで歌う童謡の、アレである。

もう客はドン引きだ。

時折聞こえるのは、「何これ?ねぇ何このライブ!」という囁き声。

そんな声も無視して、ラビはギターを鳴らして熱唱。

童謡でシャウトする奴など、恐らく多くの客は初めて見たに違いない。

…『どんぐりころころ』を歌い終わった後。

「えー…」

ラビは準備してあったペットボトルのミネラルウォーターで喉を潤し、MCに入る。

「次の曲は、ガラリと雰囲気を変えて…俺の故郷イギリスの…本場UKロックを聞いてもらおうと思う」

お、やっとまともなライブらしくなってきたかと、多くの客が身を乗り出す。

「本格的なロックだぜ?熱くて火傷すんなよ…?」

キザな台詞に、またも黄色い歓声を上げる女子生徒。

「じゃあ聞いてくれ。曲は…」

ラビは目を閉じ、ウットリしたような顔で言った。

「『みちのく一人旅』」

「「「ド演歌じゃあぁあぁあぁんっっっ!」」」

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