ONLOOKER Ⅲ

あくるひの二人


***


かくして、悠綺高校での生徒会副会長嫌がらせ事件は幕を下ろしたわけだが(後日、なぜか急に一人の女子生徒が、校風が合わないという理由を述べて転校した)、当の石蕗紅本人にとっては、全く関係のない疑問が一つ、残っただけだった。

いつの間にか公認カップルである彼とも、客観的に見れば、特に以前より距離が縮まったというわけでもなく。
独り言ともとれるような間と声量と声色とで、その名前を、彼女は呟いた。


「なぁ、准乃介」


返事はない。
返事はないが、彼が視線だけを自分に流していることは、その位置の高い顔に目を向けなくても分かっていた。

反応のないことなど気にせずに、続ける。


「心配しているわけでは、ないんだ」
「……ん、」
「でも、直姫は……あんなだし、なにを考えているのかも、よく分からないだろう?」
「うん」
「なんだか、そっくりすぎて」

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