ONLOOKER Ⅲ


「あんなに大きなカニがいたら、食べるところいっぱいあるんだろうなー」
「そんなカニ、茹でる鍋がないよ」
「えー、あるよ、きっと。巨大ハンバーグとか巨大ホットケーキもできるんだし」
「それフライパン……」
「直姫……ちゃんと聞いてるのか?」

紅が声をかけると、どう見てもパソコンの画面に集中している直姫からは、間をおかずに「はい」という答えが返ってくる。
しかし、真琴は隣で首を振っている。

「それがね、聞いてないんですよ」
「え? でも……」
「前は適当にうん、とかそーなの、とか言ってるだけだったんですけど、最近はなんか生返事でも普通に会話できるようになってきて」
「え……それは……すごいのか?」
「うーん……」

紅と真琴はなんとなく黙り込んでしまって、あとには直姫がパソコンを操作するカチカチという音だけになった。
紅としては、直姫の妙な会話術よりも真琴の話題のチョイスの方が気になったが、それについて触れるのは、なぜか今ではない気がしていた。

「直姫ー」
「なんですか」
「これ」

そして、直姫が引き出した潜在能力も、夏生の単語で喋る究極の面倒くさがりの前には、無力だということがわかった。


< 150 / 208 >

この作品をシェア

pagetop