ONLOOKER Ⅲ



「やっぱ耳が良すぎるってのも、考えものだねぇ。」
「そりゃーね……、」

昨日、一度生徒会室から出たときに偶然聞いてしまったのは、中庭で話している落葉松の声だったらしい。
恋宵が歩いていたのは3階の廊下だったが、窓が開いている5メートル近く下で小声で話す人間の声も、鮮明に聞こえるほどの聴力を持っている。

誰と話していたのかは定かでないが、落葉松の声は明らかに焦り、苛立っていた。
恋宵の耳が拾った声で分かったのは、ノエルのプロデューサーが盗作の常習犯であること、今回の新曲もInoから盗んだものを元にしていること、乃恵本人はそれを全く知らないこと。
先ほどここへ来て乃恵が話した内容と、ほぼ同じだ。
きっと昨日あの後、乃恵は落葉松から話を聞いたのだろう。



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