私立聖ブルージョークス女学院
 香田が反論する。
「それはおかしいですわ。例えば韓国や中国では夫婦別姓が当たり前ですが、少なくとも現代の日本より、韓国や中国の方が家族の結束は固いと言います。現実と矛盾していませんか?」
「韓国や中国の慣習は、むしろ女性差別の結果です。儒教の影響で、血筋は男子を通じてのみ継承されると考える。したがってお嫁に来た女性を家の一員とは認めず、婚家の姓を名乗らせない。それが韓国や中国の慣習のはずです」
 おお、よく知っているな。これは香田の旗色が悪いかな。その香田が、やや声をつまらせて続ける。
「では、夫婦はあくまで同姓であるべきと?」
「いえ、そうは言っていません。どちらかと言えばドウセイの方が、いろいろと不便はありますし、少数派ですし……」
「は?ちょっと待って下さい。日本では同姓が常識とされてきたから、この問題が今議論されているのでは?」
 香田が困った顔で僕の方に視線を向け、助けを求めるような表情をした。僕は真田をホワイトボードのそばへ招いた。
「真田。夫婦別姓というのを漢字で書いて見ろ」
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