私立聖ブルージョークス女学院
単元12 弥生
 三月の初め、聖ブルージョークス女学院の卒業式が校内の礼拝堂で行われた。いや、あれほど荘厳な雰囲気の卒業式は初めて見た。
 ステンドグラス越しに照らされた祭壇で三年生が一人ずつ卒業証書を校長から手渡され、在校生が両側の壁に並んで聖歌を歌いながらそれを見守る。僕が面倒を見てきた寮生たちが卒業証書を手にした時は、僕もガラにもなく目頭が熱くなった。
 式が終わって礼拝堂の片づけを終えて、職員室に戻ると教頭がやって来て僕にこう耳打ちした。
「片山先生。寮生の子たちが裏門で先生を待っていますよ。最後にご挨拶をしたいとかで」
「そ、そうですか。分かりました。すぐに行きます」
 あわてて裏門へ続く校舎の出口に行くと、外で真田幸、名取千尋、葉月琴音、槇明日香、リン・ジンファンがそこにいた。側には綾瀬先生、教頭、校長までいる。
 なんと全員小さなポケットサイズの鏡をのぞき込みながら、それぞれ色の違うリップスティックを自分の唇に念入りに塗っている。それもクリームじゃなくて、大人の女性用の口紅だ。僕は靴を履きながら、声をかけた。
「おいおい、君たち。そりゃもう卒業したんだから、校則は関係ないのかもしれないが……まだうちの制服を着たまま、卒業証書の筒を抱えたままでって……」
 僕は裏門に続く庭に出ながら他の先生たちにもこう言った。
「先生たちもそこにいたんなら、止めて下さいよ」
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