キミニアイヲ.
楓が莉子の手を引いて立ち上がると、毅は二人に背を向けて煙草を吸おうとしていた。



「…親父が言ってたよ。

『毅にも楓にも、後悔しないように生きてほしい。
俺達が家族になったのは、幸せになる為なんだから』って」



決して、憎しみ合う為に家族になったわけじゃない──。


莉子もその言葉をしっかりと噛み締めていた。



「だから俺は、これからは俺の好きなように生きるよ」



一回り小さく見える毅の背中にその言葉を投げ掛けると、紫煙をくゆらせながら


「……勝手にしろ」


と、なげやりだが悪意のない声で呟いた。



それを聞くと楓は口元を緩めながら、莉子の手を引いて静かに部屋を後にした。








< 220 / 370 >

この作品をシェア

pagetop