キミニアイヲ.



病院の待合室。

壁に掛けられたTVからは、控えめな音量で真面目な情報番組が映し出されている。


そんな中、莉子は糸が切れた操り人形のように、うなだれながら長椅子に座っていた。


その隣には毅が立っている。



莉子に会いたいと頑なに言い続ける楓を、仕方なくあの橋に連れていったのは毅だった。


楓が倒れた直後、すぐに二人を車に乗せ病院へやってきたのだ。




「…あいつは俺を庇ったんだ」



俯いている莉子に向かって、毅は静かな声で話す。



「今まで散々酷いことをした、恨んでいるはずの俺を……」



毅は初めて苦悩に歪んだ表情を露にした。


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