キミニアイヲ.
そこからは言葉が出てこなかった。

莉子も微動だにしないまま沈黙が続く。



ふいに、毅が莉子の肩にそっと手を乗せる。

それに反応して、莉子は虚ろな瞳で毅を見上げた。



「きっと大丈夫だ。あいつはあんたを置いて死んだりはしない」



あの冷酷な男から発しているとは思えない、柔らかな声。


見開いた莉子の目に、涙がじわりと滲んでいく。



“死”


その何よりも恐ろしい一文字は、莉子の頭の中で消えては浮かんで


どうしても最悪の事態を想像せずにはいられない。



でも、毅の一言は心強かった。


大丈夫。

楓は絶対に負けない。


自分が信じなくてどうするんだ──


そう、莉子は希望を取り戻すことが出来る気がした。



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