キミニアイヲ.
「それとね、あたし…手術受けてくるから」



産婦人科で決まった手術日は明日。

明日で、本当に赤ちゃんとはサヨナラしなければならない。



「本当は…楓にもお別れを言ってもらいたかったんだけど……」



莉子はゆっくり立ち上がると、楓の手を取ってそっと自分のお腹に当てた。


服の上からでも感じる、楓の手の温もり。



「こうすれば伝わるかな…?」



涙が枯れるほど泣いたのに、また視界が歪んでいく。



「赤ちゃん…まだここにいるんだよ……」



もう動いてはいないけど

ちゃんとここに、精一杯生きた命がある。


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