真昼の月
そういえば、トモはどうしているだろう。
携帯を持っていないので連絡が取れない。
1週間も連絡を取らないということは今までなかったので彼はあたしが自殺したかもしれないと思っているかもしれない。
あたしが死んだのであとを追うことを考えているのかもしれない。

トモに1度だけ会ってみたい。
でも逢えない。
このままの状況では。
本当に誰もいなくなるって言うことがこんなに辛いものだとは思わなかった。
辛いというよりもかなり退屈だ。
それにここはあまりにも拘束がきつすぎる。
自傷を懸念して鏡とか紐とかベッドの柵とかそういうものは一切置いていない。
退屈だから切ってしまいたいと思うこともないわけではなかった。
でも道具がない。寝逃げするしかなかった。
幸い薬漬けでいつもだるい状況だったので眠りだけはたっぷり貪れた。
まさに貪るようにあたしは眠った。もう起きたくない。
ずっと眠っていたいと思う。
眠りたい、ただそれだけのために薬だけはまじめに飲んだ。
ここでは薬を貯めることさえ許されなかった。
薬の時間にはちゃんと薬を口に入れたかどうかチェックまでされていた。
あたしはあきらめた。
模範囚みたいにちゃんと精神病患者の役をやってのけることにしよう。
いい子の振りをすれば早く出られる。
ただそれだけの悲しい打算をあたしは働かせた。
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