真昼の月
こんにちは あたし麗(うらら)。あなただれ?」
開放病棟に移されてまもなくあたしは二人の女の子に囲まれた。
ひとりはあどけない顔をした中学生くらいの女の子、
もうひとりは高校生くらいの細面の髪の長い少女だった。
中学生の子は杏奈、細面の方は麗と言うらしかった。

「こら 杏奈、麗、ベッドに戻りなさい。元気なら談話室にでも行ってなさい」
「紹介するよ、この人は高幡聖羅さん。みんな仲良くやってください」

主治医が同室の患者にあたしを紹介したけど、6つあるベッドにいたのは3人で、杏奈と麗のほかは俯いたまま、石のように固まってじっと壁に向かっている50代くらいの小太りのおばさんがいるだけだった。

「ここは比較的症状の軽い患者さんの入る部屋だよ」
主治医はそういって看護士にあとはよろしく、とそそくさと外来に行ってしまった。

あたしは開放病棟の決まりを簡単に説明されて、ここの住人になった。

「いつ、外泊できますか?」そうたずねてみた。

「先生とお家の方が面談できてからですねー」
看護士はそういった。

「うちに連絡できますか?」

「できますよ。ナースステーションに電話があるからそれを使っていいわよ」


簡単に言われて気が抜けてしまった。へえ、今までとぜんぜん違うんだ。

これなら早いところ出られそうだ。あたしは久しぶりに真理子さんの携帯に電話を入れようと思った。しかし真理子さんの番号にかけたはずなのに、なぜかトモのところに電話してしまった。5回コールして出た相手が男の人の声だったせいであたしはかなりあせった。

< 43 / 60 >

この作品をシェア

pagetop