深海の悪夢~リヴァイアサン浮上せよ
「ヴァネッサ!お前、聞いてたのか?」

 リオスが慌てふためいてマイクに向かう。

「当たり前だろ。ここからじゃ、何が起きてるか分からないしな。回線はずっと開けてるさ」

 平然と言い返すヴァネッサ。

「一応言っておくが、軍規違反だぞ」

 津也の言葉はいかにも御座なりだ。

 どうせ注意したところで、ヴァネッサが素直に聞くわけがないことを熟知しているのだ。

「機関出力に異常はないか」

 それに、今はそんなことに構っている場合ではない。

「全く問題なし。もっとも、ここでコトが起きたらアウトだけどな」

 そんなやりとりを、アデライード・アクセルは薄笑いを浮かべて聞いていた。

「ふふふ、まずは作戦通りね」

 そして、無人探査ポッドからどこかへ打電する。

『艦内ハ偽情報ニヨリ混乱。追撃サレタシ』

 リヴァイアサンには広範囲探査のための無人ポッドが搭載されており、ソナー室から操作することができる。

 そのソナー室の主であるアデライードにとって、探査ポッドから通信を送るなど造作もないことである。
 実はアデライードは、乗艦前にある取り引きを持ちかけられていた。

 話は、出航前に遡る-
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