酒店童子。
「ん……本来な、わしら一つの建物に一人だけのはずやってん。」

「それってつまり、どの建物にもあなたのお仲間が一人いるってこと?」

「そっ。そゆこっちゃ。せやさけ昔は、わしら座敷童子同士の交流も盛んやったんや。

けどな…近頃あんまりにも急に建物が増えすぎたせいか、仲間のおらん建物が増えてきたんや」

「仲間が…いない?」

「わしらかて、いてる人数は限られてる。

せやさかい、なるべくまんべんなく分散してきた。

けど、近頃限界になってきてん。

地方は人がおらんし都心は何や知らん人、人、人だらけ…

おかしいで、ほんま」

童子はそう言うと、ため息をひとつついた。

彼も楽じゃないんだな…そう考えると、薫まで悲しくなった。

その時薫ははっと気づいて、薄々尋ねようと思っていた疑問に触れた。

「…で、なんで私はあなたのことを見れてるの?」
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