lacrimosa







「ずっと、厭だったんだ。

僕っていう穢らわしい存在が。兄ちゃんを、パパを、アンジェロを、みんなを苦しめる元凶なんだよ、僕は」

『違う、バスチアン!違う…。お前は…』

「僕が居なければ…居なければさ、みんな幸せでいれたかもしれないのに。堕天使なんてさ――――

僕、汚いよ」


ポロポロとバスチアンの頬を涙が伝う。

知らなかった。自分の弟がこんなにも自身の存在を卑下し、恥じて、否定しているなんて。

生まれ落ちたその時から、彼という存在そのものを貶めた父親が憎かった。アンジェロの母親が憎かった。




「アンジェロに…

アンジェロに聞かされたのか?(お前が堕天使だってこと)」

『違うよ、アンジェロのせいじゃない』

「嘘だ、あいつに聞いたんだろ。じゃなきゃお前…あいつ…」



ダンっ!

「兄ちゃん、待って―――」


弟の牽制もむなしく、リュカは部屋を飛び出して外へ走った。










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