縁隔操作(えんかくそうさ)
 いや、見た目が女の子の形だから俺もこれほどのパワーがあるとは想像していなかったが、最新技術で造られた人型ロボットなんだから、並みの人間をはるかに上回る力があっても不思議はないか。
 社殿のある頂上にたどり着いた時、俺は半分気を失っていた。ユリアはやっと俺の異変に気がついたらしく、地面にうつぶせに這いつくばっている俺の肩をつかんで、オロオロした声で言った。
「きゃあ!大丈夫ですか?すみません、本当にすみません。まさかユリアの脚がこんなに強力だなんて思わなくて……」
 俺は体のあちこちの痛みに耐えながらなんとか立ち上がって、必死で顔に笑いを浮かべながら応えた。
「い、いや。大丈夫ッス、これぐらい。いや、俺も最近体がなまってんのかな?これでも一応受験生スから。あははは」
 それから一応社殿で参拝をして、一つ下の段の地面に降りると左手の方から時代がかった物売りの口上が聞こえてきた。ちょんまげこそ結ってないが、江戸時代のサムライの格好したおっさんが刀を振り回して見物人にこうまくしたてている。
「さあ、この刃でつけた傷にこの油をちょちょいと塗れば……」
 ユリアがじーっとその様子を見ながら俺に訊く。
「あれは、ひょっとして……ガマの油売りという物ですか?どうしてこの神社で?」
「あ、知らなかったスか?ガマの油って、この筑波山あたりが本家なんスよ。あれ、一年中やってます。あの人たちにとっちゃ正月は稼ぎ時なんでしょ」
「ああ!それで途中の参道のお店にカエルの置物がいっぱいあったんですか。わたし、まだこの辺りの事何にも知らなくて。でも、面白い街ですね。世界最先端の科学技術の研究都市のすぐそばで、お侍さんがガマの油売りって……アハハ、やっぱり面白い街ですね、ここは」
「そうっすか?俺は慣れてるから今さら面白くもないすけど」
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