縁隔操作(えんかくそうさ)
 俺は一瞬そうしようかと思った。正直言って体がもつかどうか、自信がなくなってきた。だが、次の瞬間俺の頭の中に浮かんだのは、隣の家のあの子の姿だった。いつも二階のベランダで車椅子に乗ってぼんやり外を眺めている、どこかさびしそうな表情。
 俺と同い年なら、オシャレして友だちと遊び回って、そんな事してる年頃だよな。けど、ユリアも言ってたように、そんな「当たり前」が夢の世界でしかない、そんな人生を送っているわけだよな。
 俺はきっぱりと教授に答えた。
「いや、続けるっス。ここで止めるわけにはいかないっス!」
「いえ、君のお隣のお嬢さんの事でしたら心配要りません。ここまで協力してくれたのですから、あなたが今止めてもちゃんと次の実験では、そのお嬢さんに……」
「い、いや、そういう事じゃないんっス!あの、ユリアの操縦者の女の子も、俺のお隣さんと同じなんですよね?」
「あ、はい。幼い頃からずっと車椅子生活だと聞いています」
「だから、その……うまく言えないんスけど。俺が今やっている事って、お隣さんだけじゃなくて、そういう障害のある人みんなのためになる事なんでしょ?」
「はい!それは確かに」
「だったら、俺やり遂げたいんス!俺はケンカが強いぐらいしか取り柄がねえ、成績も悪い、早い話がバカで……自分が世の中の役に立てる事があるなんて、考えたこともなかったんです。けど、これって、俺みたいなバカでもできる、世のため人のため、ってやつですよね?だから……いや、あの、なんつうか、その……」
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