縁隔操作(えんかくそうさ)
 そう言ってユリアはアイスピックを右手に取り、俺の頭の上に顔を寄せ、そしてそのままの姿勢でアイスピックを持った右手を高々と振り上げた。氷は俺の額に載ったままで。ん?という事は、次の瞬間に何が起きるかと言うと……
 俺は反射的に頭を横に大きくずらした。思った通り、アイスピックは一秒前まで俺の頭があったベッドの場所に、ズブッという派手な音を立てて深々と突き刺さっていた。
「わ!わ!わ!いや、ユリアさん!そうじゃなくて、氷を洗面器の中に置いてそこで砕いて……ああ、そうそう。いや、だから、力入れ過ぎですって!もっと動作を小さく……そんでその砕いた氷をそのビニール袋に入れて、それから俺のおでこに載せる……ああ、そうっス。はい、これでOKっス」
 やっと終わった時にちょうど森島教授が部屋に入って来た。ベッドに寝ている俺の方を見て、相変わらずニコニコした表情だが、目と眉毛は困ったような様子をしていた。ひょっとしてこの先生、笑った顔がデフォールトなんじゃねえか?
「ああ、ユリア君、そろそろボディーのメンテナンスに行かないと。後は私が見ていますから」
 ユリアは俺の方に何度も頭を下げながら部屋を出て行った。教授はベッドの横の丸椅子に腰かけ、俺に尋ねた。
「斎賀君、どうしますか?続けますか?」
「は?何の事っスか?」
「いや、私もあなたにこんなに負担がかかるとは予想していませんでして……あまりにもきついようなら、止めてもかまわないんですよ」
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