縁隔操作(えんかくそうさ)
「ああ、分かりました、分かりました。お邪魔でなけりゃ、役に立たせてもらうっス。俺の最後の仕事ですからね、今日で」
 意外な事に行先は大学病院だった。ははあ、ユリアがチョコ渡したい相手って、同じ病院に通院か入院している男の子なわけか。そいつもひょっとして車椅子生活なのかな。いや、案外若い医者の先生かも。
 そんな事を考えていると、ユリアがとある部屋のドアを開けて入って行った。俺も後を追って中に入る。そして俺はこっちに背を向けている車椅子の人物に気づいた。ロングスカートに分厚いカーデガン姿……ありゃ?女の子?
 俺はあわててその女の子の後ろ姿に声をかけた。
「すいませんス!部屋を間違えたみたいで……ほら、ユリアさん、何してるんスか?早く出ないと」
「いいえ、この部屋で間違いないですよ」
「何言ってるんスか。ここは女の子の病室じゃないですか」
 その時俺は何か違和感を覚えた。あれ?今の声、ユリアの口元からじゃなくて、俺の後ろから聞こえて来たみたいな……
 ウィーンというモーター音がして車椅子がゆっくりと俺たちの方に向きを変える。
「だって、そのチョコを受け取るのは、あなたなんですから」
 間違いない。この声は、確かにユリアの声なのに、その車椅子の上の子から聞こえてくる!
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