お隣サンは元彼クン
私は食べていた箸がとまり、全身に流れていた血液がとまった気がした。

『知らない』
私がそういうと、
『そっか。いや俺も、さっきそこで会って聞いたんだ…詳しくは聞かなかったけど。いつとかも。』


柊二がイナクナル。

私の頭では、イナクナルの言葉が何度も何度もぐるぐるまわっていた。


何だそれ…


こんなに、あたしばっかドキドキさせといて、はいサヨナラかよ…

違う。あたしが勝手にドキドキしてたんだ…


私は次の日、柊二の家を訪ねた。

『司から聞いた。何で教えてくんなかったの?』

『何度も言おうと思ったけど、お前俺の事避けてただろ。目も合わせないし。なんか俺したか?』

私は首を横にふる。


『拓の顔を書いた作品が賞をとったんだよ。まぁ一番いい賞じゃないんだけど。でも、そのおかげで、スカウトの目にとまってさ。NYに来てみませんか?って。俺にとって、またとないチャンスだと思った。ずっと、あっちで一度勉強してみたいと思ってたし。20代のうちに行きたいとも思ってたから。で、この前決めて色々手続きしてた。あっこの前、お前がりんご持ってきてくれた日。あん時ちょうど最中だったんだよ』
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