俺の彼女はインベーダー
第8章 襲来!マクスウェルの魔女
 それから四月の終わりまでは大忙しだった。俺は大学に入学して授業の単位の計算とか受講手続きをやる傍ら、ラミエルと二人で住むアパートを二部屋借りた。なんで二つかと言うと、麻耶が俺たちに一つ屋根下での同棲はまだ早いと言ったからだ。
 二部屋分の敷金とか契約金とかは、何をどう言いくるめたのか知らないが、麻耶が俺たちの両親からせしめて来てくれた。それはありがたいと言えばありがたいのだが、「年齢相応の節度ある生活と行動を」と麻耶に言われたのだけは納得しかねる。
 そのセリフを我が妹が言っても、説得力がないぞ。つか、麻耶、おまえにだけは言われたくないぞ。
 そしてやっと新居での生活が落ち着き、そろそろ何かアルバイトを探さなければと俺は焦りつつ、ラミエルガはこの地球での新しい人生に戸惑いながらも慣れ始めた頃、明日からゴールデンウィークに入るという日、俺の大学の正門前にやたらごつい黒塗りのバンが停まっているのを俺は見つけた。バンと言うよりちょっとした装甲車みたいに見える。
 車体の横には「防衛省・自衛隊」と白い文字。俺は首をかしげながら家へ帰るために正門へ向けて歩いた。俺の大学は理科系だから、共同研究とか防衛省と何らかの関係があっても不思議はないが、一般学生に姿さらけ出してこういう車が乗り付けるのも変だな。その程度にしかその時は考えていなかった。
 そのでかい車の横をすり抜けて門をくぐろうとした時、ガチャリと助手席のドアが開いて、二十代半ばくらいの女の人が俺の前に立ちふさがるように降りて来た。長い髪を無造作に後ろで束ねて、服装はパンツルックの地味な女性向けスーツ、その上になぜか袖を通さず医者が着るような白衣をひっかけている。
 正直色気のない格好だが、けっこう美人なおねえさんだったので俺は一瞬どぎまぎしたが、「あっと、すいません、失礼」と言ってそのまま通り過ぎようとした。どう見ても大学関係者には見えないし、医者にしてはなんというか、こう雰囲気が鋭すぎるような気がする。これは下手に関わり合いにならない方がいいと、俺の本能が告げている様な気がした。
 しかし、そのお姉さんはさらに俺の正面に回り込み俺の進路をふさぐ。何なんだ、この人は。まさかこんな所で、それにあんな車で逆ナンパってわけじゃないだろうが……
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