俺の彼女はインベーダー
第14章 大魔神カモ~ン
 それから30分後、俺たちはその小夜ちゃんという女の子の家にいた。なにしろ小夜ちゃんが俺に抱きついたまま梃子でも離れようとしなかったし、桂木二尉もベースキャンプになる場所があった方がいいだろうと言いだしたので、あつかましくもお世話になる事にしたわけだ。
 その家は海辺の小さな神社のすぐ横にあった。わりと大きな家で、お屋敷と言うほどではないが周りの漁師らしき人達の家より一回りでかく、しかも造りが何と言うかおごそかな感じだった。
 とりあえず中に入って座敷で勧められたお茶をすすりながら、桂木二尉が巧みな誘導尋問で小夜ちゃんのお母さんからいろいろ情報を聞き出した。
「それにしても立派なお家ですね。ひょっとしてお武家さまでいらっしゃいますか?」
「あ、いえ、とんでもねえ」
 お母さんは小夜ちゃんを俺から引きはがそうとしては根負けしてあきらめて、という動作を繰り返しながら、いかにも育ちの良さそうな品のあるしゃべり方で答えた。
「この家はお隣の神社に代々仕える謡い姫の家系でございます」
「ウタイヒメ?」
「はい。あの神社には遠い昔からこの地の守護神である、なんでもおっかない神様が祭られておりまして。魔神様と呼ぶ者もおります。で、代々この家に生まれた女の子の一人がその謡い姫を継ぐ事になっております」
「あら?では、小夜ちゃんのお母さん、あなたもその謡い姫でいらっしゃるんですか?」
「はい。ただ、魔神様がお出ましになるのは百年に一度あるかないかの事だそうで。わたしにも先代、つまり小夜の婆様にも、お歌を捧げる機会はありませんでした。小夜が七つになったら謡い姫のお役目を引き継ぐ事になっております」
< 176 / 214 >

この作品をシェア

pagetop