俺の彼女はインベーダー
 俺はあっさり両手を万歳の格好に上げた。麻耶は勝ち誇った顔で続けた。
「答は米ドル。アメリカのお金で支払うのよ」
「え!どうしてそんな面倒な事するんだ?」
「米ドルはね、世界基軸通貨と言われていて、アメリカ以外のA国とB国の貿易でも支払いは米ドルで、ってケースがほとんどなの。まあ、何か事情があればその国の通貨で決済するよう取り決めるのは勝手だし、最近はEUのユーロを使う取引も増えてきているけど、まだまだ外国との貿易の支払いは米ドルでやる国が多いのよ」
 ここでラミエルがポンと手を叩いて話に入ってきた。
「つまりアメリカのドルという通貨が地球上で一番価値が安定していて信用がある、そういう事ですか?」
 麻耶はラミエルに軽く抱きついて頭をなでなでしながらぱっと笑顔を浮かべた。
「さすがラミちゃん。兄貴より頭いいわね」
 ふん!悪かったな。頭の悪い兄貴で!
「私の星も八百年ほど前までそういう状況だったと学校で習いました」とラミエル。
 てことは何か?地球は彼女の星より少なくとも八百年遅れてるわけか?
 麻耶が話を続ける。
「別に米ドルを使わなきゃいけないって決まりがあるわけじゃないわよ。でも他の国、特に貧しい発展途上国のお金は価値の変動が激しくて、受け取った時には値打ちが半分になっちゃったとか、最悪の場合は価値がゼロになって紙くず同然になっちゃったとか、そういう危険があるわけ。その点、米ドルなら多少価値が上がったり下がったりはあるけど、少なくとも紙くずになる心配はないわ。だから国際貿易では米ドルで支払うというのが国際的な慣行になっているの」
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