星の船 ー淡い月の鍵ー

流羽と柊がいるこの場所は、寝台列車〝星の船〟のB等個室と呼ばれる所。
広いとはいえない室内だったが、洗面台、衣類戸棚(クロゼット)、車窓を臨むテーブルがあり、

そして2人分の寝台を兼ねるソファがあった。




「ああ、そうだな。部屋は素敵だ。
…って、そうじゃなくて。俺が言いたいのは、もう一つ部屋が必要ってことっ」

「なんで?ここ2人部屋だもん、一つで足りるよ?」


訳が分からないといった様子で、流羽は黒目がちな眼を柊に向ける。


「ーとにかくっ、流羽はこの部屋使いなよ。俺はC等寝台に行くから」

 縹色の背負い鞄(ザック)を肩に掛け、柊は個室のドアから出た。


「えっ!?何で?」

慌てて流羽は柊を追い、
車窓の並ぶ廊下で柊の背負い鞄を掴み、引き止める。




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