恋人 × 交換!? 【完】
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日曜日ということもあって、やや人が多めの車内で、私たちは座れずにドアのそばで立つことになった。
奏は吊革につかまって、私は椅子の端にあるポールにつかまる。
夏にプラスしての雨模様と人の密集で、2駅を過ぎたときには、熱帯雨林で立ち往生でもしてるような蒸し暑さになっていた。
誰かのキツイ香水のにおいも気になってきてうんざりしていると、奏が「もうすぐ着くぞ」とひと言。
「もうすぐ?ていうか、どこ、行くの?」
「すぐそこ」
奏のいう通り、下車したのは次の、市内でいちばん大きな駅だった。
この近辺では「エキソバ」と略されいる、その名の通り駅のそばに建つビルがあり、私たちは、そこの1階にあるカラオケ店に入った。
「ちょっと待ってろ」
彼は、私を若干離れたソファーに座らせて、ひとりで受付を済ませる。
(映画とか、水族館とかじゃ、ないんだぁ)
デートなんてことは、未知の領域。
だから、最初がカラオケからということもあるんだろうと、このとき私は素直に受け入れていた。