恋人 × 交換!? 【完】
でも、案内された個室で、店員さんが説明を終えて出ていってからも、奏は歌本をめくろうとしなかった。
雰囲気がどことなく変だからか、硬めのソファーの心地悪さまで、余計に気になってきた。
何度座り直しても、なかなかしっくりこない。
(…………)
ただただ、得体の知れない妙な空気での沈黙が続く。
「あの……歌、わないの?」
「あ?あぁ」
やっと声をかけてみても、心ここにあらずの生返事ばかりだった。
こんなにもそばにいるのに、遠恋で電話してるみたいな距離感。
壁越しに、隣で歌う人の声がわずかに聞こえるけど、基本ふたりきりの空間。
普通ならドキドキするシチュエーションなのに、今は嫌な予感しかなかった。
(デートするような感じじゃない……)