先生とあたしの子育て〜愛する家族〜


「先生?どうしてここに…」

病院に着くと、美羽が手術室の前の椅子に座っていた。

「美羽、なにがあった!?」

俺は気が動転していたのか、先生モードの格好にも関わらず『理兄』モードで呼んでしまった。

いつもは、俺のことは気づいてないから美羽の名字である"飛田(とびた)"と本人の前ではそう呼んでいる。

「佳菜がこれを取ろうとしてひ…く…っ…」

美羽が泣きながら俺に渡してきたのは、佳菜の結婚指輪。

「…バカだな。佳菜…こんモノのために…」

「理兄…ごめ…ひ…くっ…」

「なんで、お前が謝るんだ?誰のせいでもない…」

そう言って、俺のことを懐かしい名前で呼ぶ美羽を抱き締めた。


佳菜…


俺と姫恋と美羽を置いて死んだら許さないぞ!



そして、『手術中』の電気が消えた…。





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