甘い毒
静かな部屋。

ただ、時を刻む針の音だけが聞こえる。


貴方の匂いがする、貴方の部屋。



「いっつも、してんね?」

「ん〜?」

「そうやって髪、くるくるーって。」


ベッドに寝転がり枕に俯せながら話す貴方の隣で、天井を仰ぎながら髪を弄る私を見て、そう言った。


「ああ、うん。癖?」


顔だけ傾けると、目を細める貴方と視線が絡む。


「だろーね。いっつも、そーしてっし。」


“ふっ”と、笑いながら、私の髪に大好きな手が伸びる。足なんてパタパタさせて、子供みたい。


「ほっそ。んな、クルクルしてっと…絡まるんじゃね?」

「たまに、ね。」

「気持ちー。」


私の髪を撫でながら、更に目を細める貴方が

…何より愛おしい。


「もう、ほんとに絡まるってば。」

「うははっ!」


私の言葉を聞いて、声を上げて笑いながら、くしゃくしゃって髪を撫でてくる。


「遊びすぎ。」

「気持ちーんだもん。」

「あっそ。」


“言いたい事がある証拠。”

いつかの、顔すら忘れた誰かの、言葉を思い出した。


…スバリ、当たり。


好きよ、凄く好き。

貴方が好きなの…


喉の奥に詰まったまま、言葉にはならない声。

言いたい事を飲み込んじゃうのも、癖なのかな。
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