君桜


苦しそうに息をする葉奈。


「…熱が上がるだろ。行くぞ」


「…や、だ…っ」


「……」


何なんだよ、ホントに。


「…じゃあ、ここでキスするぞ」


「行く」


…。


即答かよ!


そこまで嫌がられると結構ショックなんですけど。


熱い体温を持った葉奈の手を引いて、肩にカーディガンを掛けて家を出る。


車庫に入っている俺の車を走らせた。


隣をチラッと見てみるけど、葉奈は窓に頭をくっつけて窓の景色をトロンとした目で見ていた。


何を考えているのか分からない葉奈の瞳。


澄んでいるように見えて、とても怖い。


車が揺れるたび、表情が壊れる。


頭が痛いんだな。


響くんだろう、きっと。



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