君桜



「…っ!」


この人だ。





箱の中に入っているのは、


あの事件の記事。


全ての新聞のその記事を切り取って、この箱の中に封印した。


思い出さないように。


自分が壊れないように。


封印したはずの、記事。


いろんな雑誌の記事も一緒に。


あの女の人は、昔―――――………





――BBB…


そんな空気に、携帯が鳴り響く。


学さんから買ってもらった携帯電話。


あたしは、その携帯を無意識のうちに持ってきてしまっていたのだ。


この番号を知っている人はただ一人。


「…学さん…」


泣きたいよ。


叫びたいよ。


壊れたいよ。


思うがままに感情をぶつけたいよ。


それができないんだ。


できないから、困ってるんじゃないか。


――ポタッ…


携帯の上に雫が滴り落ちた。


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