君桜
――学SIDE――
タクシーに葉奈を抱えながら乗り込む。
見た目の通り小さくて軽い。
――クーラー効き過ぎじゃない?――
あの時点で気付くべきだったんだ。
夏の夜、
街で見つけた、大事なやつ。
まさか、こんな気持ちになるなんて思ってなかった。
髪が長くて、
色白で、
淡いピンクの頬、
ふっくらとした唇。
誰が見ても、美少女。
だけど。
だけど。
コイツは、心に深い傷を負っていて。
さっき、美羽が妊娠したことを報告した時、葉奈の顔色が一瞬、一瞬だけ変わった。
気づかないふりをしたけどな。