BLACK
店内の時計は夜6時を回ろうとしていた。


「お!やばい!行かなきゃ!」


慌ててもらったチョコレートを鞄にしまい席を立った。


「先行くね!」


「ちょっと待ちな!」


行こうとする腕を掴まれる。


「気をつけてね」



愛子の優しい笑顔。


ふんわりとホワイトチョコストロベリーの香り。


柔らかく甘いキス。



「行ってきます!」


「行ってらっしゃい!」



店を出ると、その気温差にくしゃみが出た。

「お~さぶっ!」


黒いダウンジャケットのジッパーを首まで上げた。


空は雪でも降りそうなくらい、白っぽい色をしている。


ポケットに手を入れ、現場へと足を向ける。


ホワイトチョコストロベリーの味が足を重たくさせた。






やっぱり今日は。

愛子の家に帰ろっかな。
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