冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 何たる失態か。

 女一人に振り回されて、酒におぼれて、挙げ句の果てには自爆である。

 こんなことが、あっていいのか。

 と、とにかく。

 このまま、同じベッドにいるワケにもいかない。

 外はもう夜明けで。
 朝ということは、彼の仕事が始まることを意味している。

 こんなところをシュウに見られようものなら。

 ガバッ。

 カイトは反動をつけて飛び起きた。

「ん…っ…」

 その勢いで揺れたベッドに、彼女は小さなうめき声をあげた。

 鼻にかかるような掠れた音

 ズキズキズキ。

 心臓をガタガタにさせてくれる女だ。

 いや、いまはそんな事実を確認するより、彼はベッドから転がり出なければならないのである。

 もしかしたら、メイは眠りが深く熟睡していて、カイトが同じベッドに来たことを覚えていないかもしれない。

 それなら好都合だ。

 そんなささやかな望みを託しながら、カイトはベッドから飛び出した。

 いや、転がり落ちたと言った方が正しいか。それくらい慌てていたのである。

 ガンッ。

 床に頭をぶつけたカイトが見たものは、その頭からわずか5センチほどずれたところに転がる、昨日捨てた枕だった。

 見事接触していれば、こんなに頭が痛い思いをすることもなかったというのに、まるで昨日カイトに捨てられたことへの反撃であるかのように、少し離れたところにいるのだ。

 羽根枕が、ざまーみろと言っているように思えて、カイトはムッとした八つ当たりに、それを掴み上げると更に遠くに投げ捨てた。

 チクショウ!
 何でこうなんだよ!

 全てがうまく噛み合っていない。

 それもこれも!

 カイトは、コトの元凶であるメイを睨み付けようとした。ベッドの上を、だ。

 しかし。

 チョコレート色と目があったことに気づいた。

 丸く開いた茶色の目だ。
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