冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 カイトの騒々しい起床で、目を覚ましてしまったのである。

 彼が枕を投げ捨てている間に起きあがったのか、半身がベッドから引き上げられていた。

「……」

 言葉も、出ない。

 クソッ!

 カイトは、床にあぐらをかくように座りながら、思い切りそっぽを向いた。

 八つ当たりしたい枕は、自分が遠くに投げたために、もうその位置からは届かない。

「あ…あのっ…」

 カイトはびくっとした。

 彼を呼ぶ時は、いつもそういう始まりだ。

 しかし、心と言葉に何の準備も出来ていない今のカイトは、かなり大変な状況になりつつある。

 どんな質問にも答えられない、絶対の自信があったのだ。

「あの…おはようございます」

 しかし、メイの言葉は質問じゃなかった。

 おずおずとした、朝の挨拶だったのである。

 カイトは、横目で彼女を盗み見た。

 まだパジャマのボタンは、彼が見た時のままで。慌てて視線を横に逃がす。

 早くボタンを止めろ、と心の中で叫ぶが、口に出せもしない。

「お…おう…」

 彼女が、ベッドの件を言及しないので、もしかしたら気づいてねーのか? と自分に本当に都合のいいことを考えながらも、落ち着かない状況だった。

 女と同じ部屋で同じベッドで夜明かしした後に、真顔で「おはよう」なんて言えるほど、カイトの性根は女性向きではなかった。

 そうして。

 気まずい沈黙が流れる。

 どう行動していいのか、何を言っていいのか分からないのだ。

 口のうまい男なら、もう三桁以上の言葉を発しているに違いない時間を、2人ともただひたすらの沈黙で通した。

 だー!! 鬱陶しい!!

 内心でイライラとシビレがキレまくる。

 なのに、それを口から出して彼女にぶつけることができなかった。

 ただ、心の中を嵐のように駆けめぐるだけなのだ。

 けれども、カイトには幸運な事実があった。

 部屋のドアがノックされたのである。
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