冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 最初、ハルコが服を用意してくれた時にも、そんな風に思った。

 服。

「あ!」

 メイは、手をパチンと叩いた。

 思い出したことがあったのだ。

「あの…それで、お金をお借り出来たので、これで買い物が出来ます」

 掃除をする時に、服を汚す心配をしたくなかった。

 これで、汚れてもいい服が買えるのである。

 昨日までよりも、しっかりと仕事をすることが出来るのだ。

「この辺の地理には詳しいのかしら?」

 買い物は、どこかの店に行かなければならない。

 そこに、自分で行くことが出来るのか、とハルコは聞いているのだ。

「あ…」

 彼女は、止まってしまった。

 そうなのだ。

 これまで、一度もこの家の敷地から出たことはない。

 玄関先の掃除のために出たくらいで、あとは寒いということもあって、ほとんど屋敷の中で生活していたのである。
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