冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 しかし。

「…この匂いはロールキャベツか?」

 彼の平穏は、簡単に崩されるのだ。

 無粋にダイニングの扉が開けられたことによって。

 いきなり、穏やかに回っていたカイトの歯車の間に、杭が差し込まれた気分だった。

 がちっと噛んで回らなくなる。

「ソウマ…」

 ドアの方に身体をひねりながら、忌々しくその名前を呼んだ。睨みつきで。

「ああ、食事の邪魔はしないから安心してゆっくり食べてくれ…部屋の方で待っているから」

 はっはっは、しかしうまそうだなぁ。

 場の雰囲気をブチ壊したことを、全然悪びれていない声だ。

 存在自体が、すでに邪魔だと怒鳴ってやろうかと思ったら、すっとソウマは消えて行った。

 言葉通り、勝手に彼の部屋で待つつもりなのだろう。

 くそっ、帰れ!

 念じても通じる相手ではない。

 とっとと怒鳴って叩き出すしかないだろう。

 腹いせに、わざとゆっくり夕食を食べながら、しかしカイトの目は、すっかり三角になってしまった。

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