冬うらら~猫と起爆スイッチ~

「おい、バカ! 押すな!」

「うわ、マジかよ…全然企画にないヤツだぜ」

「ちょっと待て、これどうやって操作すんだ?」

「ばーか、おめー、『コウノ』のゲームやったことねーのかよ。こうすんだよ、こう…ほーら、来ただろうが」

「シミュレーションだぜ、シミュレーション! やっぱ『コウノ』は死んでなかったんだ!」

「こら、どけ…見えないじゃないか!」

「チーフ! ずっりー! オレにさせてくれよ!」

「バカめ。『コウノ』の難易度に、お前がついてこられるか」

「しっ、黙れ…聞こえねーだろ!」

「アホ! まだBGMなんかついてねーよ! 字ぃ見るのに、耳がいるか!」

「おおー! 戦闘MAP! 燃えるー!!!」

「何だ? 向こうは偉く進軍はえーな…人間側不利じゃねーの?」

「これだから、『コウノ』やったことねーヤツは…」

「よっしゃ! 戦闘! って、おい!!!!」

「うわ! タイムゲージありやんの…っかも、メチャクチャはえーじゃねーか! チーフ! 速くコマンド入れないと殺さ…あーあぁ、やられちまった」

「うるさい…まだシステムを把握してないんだ。ガタガタ言うな」

「あっ!」

「何だよ…これ」

「何だよって…食われてんじゃねーの?」

「食われてって…」


 シュウは、騒々しくも仕事の能率の悪い部署だ、と思いながら開発室を出て行った。

 副社長がそこにいるのにも気づきもしないで、おそらくカイトの作ったゲームでもやっているのだ。

 しかも、今日は祭日である。

 なのに、あんなにたくさん出社しているとは。

 カイトが、開発の連中に非常に尊敬されているのは知っている。

 さっきから頻繁に出てきた、『コウノ』という言葉を聞くだけで、それが伺われた。

 カイトのプログラマー名だ。

 大学時代から、カイトではなくそっちの名前で、ずっとゲームを作っていた。

 彼らのほとんどが、そのコウノとやらに撃ち抜かれて、入社した連中なのである。
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