冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 驚いたように硬直する、メイの身体。

「あ、あの…っ」

 焦っている身体を、もっと強く抱く。

 そして。

「好きだ…」

 絞り出した。

 これまで言えなかった言葉を、彼は呻くように絞り出したのだ。

 メイは、動きを止めた。

 ビクリと身体を震わせた後、まるで人形のように固まってしまった。

 髪の感触に顔を埋める。

 メイの匂いと体温が、頬に伝わってきた。

 その髪にもっと顔を押しつけた。

「好きだ、好き…だ…好きだ……きだ…」

 ずっと、ずっと好きだった。

 最初からメイだけは、自分の中で特別な位置にいた。

 理由も分からずに、あの店に置いておくのがイヤで、大金払って連れ出して。

 その時から、彼女はカイトの中にある、あの椅子に座っていたのだ。

「好き…だ」

 カイトは、その椅子の前に立った。

 そして、彼女に初めてそう言ったのである。

 現実では、背中からメイを抱きしめて、髪にそれを伝えるしか出来ない。

 もうどうなってもよかった。

 この気持ちが溢れて止まらない。

 いま伝えておかなければ、明日死ぬような気がしたのだ。


 ぽたっ―― そんな小さな音がした。
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