冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 確かに、彼と過ごした夜もあった。

 一番最初の頃だ。

 まだ、客間が使える状態にはなっていなかったので。

 でも、あの時と今度は、全然意味が違う。

 あの時は、まったくの他人で、彼は決して手出しはしてこなかった。

 今度は。

 もう戸籍上、夫婦だ。

 そして――同じベッドで眠る、という意味も全然違うのである。

 その現実的なものが、一斉にメイに襲いかかってきたのだ。

 結婚して初めての夜。

 初夜。

 などという単語が、頭を掠めてしまったのがマズかった。

 彼女は、ますます真っ赤になってしまったのである。

 身体が全然動かなくなってしまった。

 すると。

 カイトもそれが伝染してしまったのだろうか。頬の端を少し赤くする。

 そんな顔も、見られたくないように横の方にそらす。

 しかし、彼は握っていた手を離さなかった。そして、決意したようにドアを開けたのである。

 ぐい、と引っ張られる。

 もつれる足で、部屋に入った。

「あ…」

 思わず、声をあげてしまう。

 部屋は――昨日、彼を食事に誘いに来た時と、まったく変わっていなかったのである。

 何もかも、昨日のままだ。

 彼らだけが、昨日と大きく違ってしまったのである。

 どうしよう、どうしよう。

 心臓が、バクバクと走り抜けていく。

 中に引っ張り込まれて手を離された。

 カイトは、ドアの方に戻る動きを見せたが、それをバタンと閉ざすとすぐに帰ってくる。

 この人と。

 近づいてくるカイトを見る。

 この人と、ホントに結婚しちゃったんだわ!
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