冬うらら~猫と起爆スイッチ~

 彼は、メイの目の前で止まった。

 どういう表情をしていいか分からないのは、相手も同じのようで。

 唇を何度か開けようとした動きはあったが、きゅっと閉ざして横を向いてしまった。

 何を、どう切り出したらいいのか、分からないのだろう。

 それは、彼女も一緒だ。

「あ! コ、コーヒー入れてきます!」

 そうだ。

 彼女には、お茶の時間という強い味方があったのである。

 前は、食後にそういう時間を取っていたではないか。

 メイは、言うなり部屋を飛び出して行こうとした。

 この張りつめた、居心地の悪い空気に耐えきれなかったのだ。

 しかし。

 その身体は、遠くまでいけなかった。

 すぐに、何かに引っかかって止まってしまったのである。

 え。

 おそるおそる振り返る。


「今日は…お茶はナシだ」


 カイトが――彼女の手を掴んでいた。
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