それでも朝はやって来る
扉が開ききると、誰もが一礼していたので朝子も慌てて深く頭を垂れた。


目の前を着物姿の恰幅のよい男性が通りすぎた。


その男は、朝子から一番遠い席に座った。



「父上、こちらが佐伯朝子さんです」



悠里から紹介されて、慌ててテーブルに着きそうなぐらい頭を深々下げた。



「ははははは…初めまして!佐伯朝…」


「どうぞ、お掛けなさい」



優しくゆったりとした口調だったが、何処か威圧的だった。



「悠里がお世話になっているそうで…」



顔を上げてその男の顔を見ようとするが、逆光で眩しくて目を細めた。


さっと、真楯がブラインドを閉めてくれた。



彼は、白髪でしっかりとオールバックで整えられていた。

恰幅のよさは顔にも現れていて、頬や首は血色がよく、耳朶は大きく垂れ下がっていた。


あれは…

噂に聞く、『福耳』!

やっぱり、金持ちは耳が違うんだな~



瞳は贅沢な皮膚に圧されて、細く常に笑っているように見える。


表情がいつも笑っているように見えるため、わからない。



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