それでも朝はやって来る
12 ★ 情事×執事
中に入ると、長く白いダイニングテーブルの真ん中に真っ赤なバラが生けてあった。


悠里が椅子を引いてくれたので、腰かける。


木槿が踵の低いパンプスを選んでくれたので、特にぐらつくこともなく椅子に座れた。



それに……

悠里が選んでくれたワンピース。



実はとても着心地が良かった。



フワフワしたワンピースだが、 ハイウエストで足が長く見える。


スカートの裾は綺麗な刺繍が施されていて歩くと綺麗に裾が揺れた。


シンプルだけど、とても上品だ。




少し緊張した面持ちで、じっとテーブルの薔薇を見つめていた。


あたし、悠里のお父さんに会うんだ…


もじもじしながら、時間が過ぎるのを待った。



「おい、何、花見つめながら百面相してんだよ」

「そそそ…そっちこそ、何、スーツなんか着てるのよ」


いつもの調子で、悠里に鼻で笑われた。


グレーのタイトなスーツ。

ワイシャツもグレーだけど、スッキリスマートに仕上がっている。


こうやって見ると、確かに金持ちっぽく見える…


「親父に会うときは、こういうの着るだろ?普通…」


「いやいや、着ないでしょ。うちにいるときはジャージしか着てないくせに」


必死の形相で突っ込んだら、悠里が「ホントだな」と言って笑ったので、朝子もつられて笑った。



その時、ガチャリとドアが開くと悠里がすかさず立ち上がった。


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