それでも朝はやって来る
「東雲くんもよかったら、夕食一緒にどうですか?」


沈黙を破ったのは、真楯だった。


「何だか誤解してるようですから」


真楯は大笑いしながら、悠里の肩を叩いた。


「実はね、僕は佐伯さんのお母様の姉の息子なんですよ。そして、八重樫…悠里は僕の甥で…

一応、佐伯さんのお父様にはここに住むことを許して頂いてるのだけど…」


そんな作り話信じるわけない。

しかも相手は、頭のきれる生徒会長の櫂だ。真楯だってわかっているはず…



「朝子の母親は10年前に亡くなりました。しかもほぼ初対面であろう男二人が、朝子と一緒に住むのを親父さんが許すわけない!」


ギリッと櫂は奥歯を噛み締めた。


真楯はゆっくりと櫂の肩に両手を置いて、怒り高ぶる櫂の目を覗きこんだ。




刹那。


真楯の眼の中が血走り、瞳全てが漆黒に染まった。

この世のものとは思えない瞳だった。

一歩も動けず、背筋に嫌な汗が流れ落ちた。




怖い…



神経が高ぶっているせいで、朝子は自分の荒い息づかいが耳につく。


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