それでも朝はやって来る
真楯はゆっくりと櫂の肩から手を離した。


ハッとして真楯をみると、瞳の色はもとの色に戻っていた。


金縛りから解かれたように、朝子は櫂に駆け寄った。


「櫂兄、大丈夫?」


顔を覗きこんだけど、櫂は虚ろな眼で宙を仰いでた。


「ねぇ、櫂兄さん!!」


力一杯、櫂を揺するが反応がない。



なんなの!?



「真楯先生!一体櫂兄に何したんですか!?」


真楯は朝子の問いに答えることはなく、スゥと眼を細めた。

いつもの彼からは想像できない冷たい瞳で、櫂に一瞥をくれた。


「東雲くん、今日は悪いけどお引き取り願えるかな?そして、今日合ったことは忘れてくれるかな」


そう囁くと、櫂はフラフラと玄関へ行ってしまった。


「櫂兄!!」


朝子は追いかけようとしたが、悠里がそれを許してくれなかった。


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