それでも朝はやって来る
「棗は死んでねぇよ」


見ると悠里の瞳は元に戻っていた。

額にはうっすらと汗がにじんでいる。


「ワリィ…俺も意外に駄目かも…」


と言うと悠里は朝子の方に倒れ込んできた。

悠里の重みに耐えきれずに、地面に座り込んでしまった。

ちょうど、朝子が膝枕するような格好になった。


「ちょっと、悠里!!大丈夫!?」


心配そうに朝子が覗き込む。

逆光になって悠里からは朝子の表情が見えない。


「ちっと、久々…力…使ったかんな…」


頭が割れるように痛い。

悠里は苦痛に顔を歪めた。


「やっぱ、完全体じゃないと厳しいか…」


独り言のような呟きを朝子は黙って聞いていた。


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