それでも朝はやって来る
前に一度だけ見た真楯先生の瞳も、棗君と同じものだった。

でも、今見た悠里の瞳は紅い…まるで流れ出た血のような…恐ろしい真紅だった。


これが、悠里の力なの…?


膝の上の悠里は眉間に、皺を寄せて苦痛に耐えていた。


棗君に憑いていた『それ』は、あたしを食べるって言ってた…

いったい何が始まってしまったの?

あたしはどうしたらいいの?


「ねぇ、悠里。どうすればいい?」


怖くて体に力が入らない。

どうしよう…

涙が睫毛を伝って、悠里の顔に舞い降りていく。


止まらない…

誰か助けて…



お父さん!!



偶然にも涙が悠里の口に入った。

その瞬間に頭の痛みが消し飛んだ。



悠里はそっと朝子の頬に両手を添えた。


「悠…里…?」


驚く朝子に優しく微笑み、涙を啄んでいく。


「大丈夫だ。必ず俺が守ってやるから」


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